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民泊新法の届け出(住宅宿泊事業法)

静野行政書士事務所では2018年6月15日に施行される、いわゆる民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づいた申請・届出をはじめ、様々なご相談をお受けいたします。

民泊新法の届け出<small>(住宅宿泊事業法)</small>

インバウンド需要等の増加に伴い、民泊事業の重要性がますます注目されています。

現在、「Airbnb」などのサイトに登録し、民泊を行っている方がいますが、日本では宿泊施設を営業するためには「旅館業法」による許可が必要とされています。

「旅館業法」については昭和23年の施行から現在までの約70年の間に、いくつかの改正を経て時代の要求に対応してきましたが、外国人観光客の増加などによる宿泊施設の不足、人口減少による空き家問題、更にはインターネットという当時はなかったインフラによる新しいビジネスモデルの普及に伴い、旅館業法の改正だけでの対応が困難になってきました。

住宅宿泊事業法の施行日

そこで、「民泊」という新しい営業形態の宿泊提供に関する法律「住宅宿泊事業法」が2017年6月9日に成立しました。
施行は2018年6月15日です。(住宅宿泊事業法案)

2017年10月27日
住宅宿泊事業法施行規則、国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則が公布
2017年12月26日
「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」が公開
2018年3月15日
事前届出・登録開始
※ 住宅宿泊事業法関連の申請書類は『住宅宿泊事業申請書類ダウンロード』のページでダウンロード頂けます。

住宅宿泊事業法(民泊新法)とは

住宅宿泊事業法

従来の旅館業法で定める4つの営業形態(ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業)や国家戦略特別区域の特区民泊にはあてはまらない、新しい営業形態である「住宅宿泊事業」に関して規定する法律です。

「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の対象となる民泊サービスは、「旅館業法」の対象外となる条件として、「人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が1年間で180日を超えないもの」とされています。

住宅宿泊事業法(民泊新法)の対象

住宅宿泊事業(新法民泊事業)は、「既存の住宅を1日単位で利用者に貸し出すもので、一年間で百八十日を超えない範囲内で、有償かつ反復継続するもの」となります。

なお、「人を宿泊させる日数が一年間で百八十日を超える施設」は、住宅宿泊事業法(民泊新法)の対象外となり、従来の「旅館業法」に基づく営業許可が必要になります。

住宅宿泊事業法(民泊新法)の基本的な考え方

住宅宿泊事業法(民泊新法)の対象となる民泊施設はホテルや旅館などの宿泊施設ではなく、あくまで「住宅」という位置付けです。

民泊施設として提供する家屋の建物用途も「住宅、長屋、共同住宅又は寄宿舎」という扱いになります。

住宅宿泊事業者(家主)、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者というそれぞれの役割に対する適切な規制を課して、適正な管理や安全面・衛生面を確保するような仕組を構築しています。

さらに、届出や登録によって、行政が住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者を把握できるような仕組みになっています。

住宅宿泊事業法(民泊新法)の注意点

住宅宿泊事業を始めるにあたって、非常に重要な注意点がいくつかあります。

住宅宿泊事業で使用できる「住宅」として、住宅宿泊事業法第二条第一項第二号に「人の居住の用に供されていると認められる家屋」と定義されています。

さらに住宅宿泊事業法施行規則第二条で「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」と定義されています。

どのように重要なのかをわかりやすくご説明したいと思います。

1. 現に人の生活の本拠として使用されている家屋

「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」とは、特定の人が現在生活している家屋を指します。 「継続して生活」というのは、具体的にはその家屋が住民票上の住所となっているようなケースです。 短期的に、ただ住んでいるという場合は「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」に該当しません。

2. 入居者の募集が行われている家屋

「入居者の募集が行われている家屋」とは、住宅宿泊事業をおこなっている間、売りに出していたり、賃貸の募集をしていたり、人が居住するための入居者募集をおこなっている家屋を指します。

ここで、注意しなければいけないのが、募集の方法です。

住宅宿泊事業を行うために、入居者が募集しないような不利な条件で募集をしている場合、入居者募集の意図がないということで、「入居者の募集が行われている家屋」には該当しません。

3. 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」とは、生活の本拠として使用されていないものの、少なくとも年1回以上は使用しているような家屋を指します。

ですから、居住としての使用履歴が全く無い民泊専用の新築投資用マンションは「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」に該当しません。

随時居住の用に供されている家屋の具体例

「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」には以下のようなものがあります。

  • 別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋
  • 休日のみ生活しているセカンドハウス
  • 転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度居住の用に供するために所有している空き家
  • 相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住の用に供することを予定している空き家
  • 生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家

その他の重要な注意事項

先程ご説明しましたように、住宅宿泊事業として使用できる「住宅」は、「人の居住の用に供されると認められているもの」です。

人を宿泊させている期間以外の期間に、人の居住以外の事業の用に供されているものは「住宅」に該当しません。 住宅宿泊事業法では営業日数が年間180日以下とされています。

残りの180日を超す期間で、「人の居住以外の事業などをおこなう家屋」では住宅宿泊事業をおこなうことはできないということになります。

住宅宿泊事業法(民泊新法)の注意点

住宅宿泊事業法(民泊新法)は「条例」「営業日数の上限」「住居専用地域での営業が可能」という3点が大きなポイントになります。

なぜその3点がポイントになるのかを見てみましょう。

1. 「条例」の注意点

民泊新法(住宅宿泊事業法)では、営業日数を「条例」で制限することが出来るとされています。(大幅に営業日数を制限された地域では、事実上新法民泊は営業が出来ない可能性があります)。

民泊を始めようとする地域の条例ごとに、営業日数の上限を設定されていないかを必ず確認する必要があります。

住宅宿泊事業法では以下のように、一定の要件の下で、条例で営業日数の制限を認めています。

(条例による住宅宿泊事業の実施の制限)
第十八条 都道府県(第六十八条第一項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理する保健所設置市等の区域にあっては、当該保健所設置市等)は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる。

ただし、自治体の規制を最小限とするため、条例で営業を禁止したり、営業日数を制限したりする場合は、区域や期間を具体的に明記するよう規定されています。

また、規制の目的は、「静かな環境を住民が求めている別荘地内での繁忙期」「学校や保育所付近で、長期休暇中を除く月曜日から金曜日まで」のような詳しい内容を記述して、騒音や道路渋滞といった住環境悪化の防止などの範囲にとどめるよう求められています。

2. 「営業日数の上限」の注意点

条例で上限が設定されていない場合でも、最大で180日しか営業ができません。営業日数に上限が設定されるということは、限られた営業日数で収益を上げなければいけないということになります。

賃貸物件を使って民泊を始めるような場合は採算が合わなくなる可能性があります。

その場合は、「旅館業法の簡易宿所営業の許可」を取得して、旅館業として民泊ビジネスを行うことになります。

  • 180日以下の営業で構わない人→新法の民泊営業
  • 180日以下の営業では採算が合わない人→旅館業又は特区民泊

3. 「住居専用地域での営業が可能」になる注意点

「住居専用地域での営業が可能」になる注意点

大阪市の特区民泊などでマンションの民泊が出来ない理由として、住居専用地域にある物件というケースがあります。

住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された場合、用途地域の制限がなくなれば、住居専用地域のマンションの民泊営業が急増する可能性もあります。

但し、マンションの場合は法律とは別に「マンション管理規約」という、それぞれのマンションのルールがありますので、管理規約の内容によっては民泊をすることは出来ないというケースもあります。マンションでの民泊禁止を検討されている管理組合の方々は、早急に準備を進める必要があると思います。

  • 管理規約で民泊が禁止されていないマンション→新法施行で民泊営業が出来る可能性あり
  • 管理規約で民泊が禁止されているマンション→新法施行でも民泊営業は出来ない可能性が高い

長野の民泊事業のご相談は当事務所まで

「住宅宿泊事業法」には他にも、これまでの説明以外にも多くの規制や注意点があります。

「住宅宿泊事業法」の成立により、今までは禁止されていた住居専用地域で民泊営業が出来るようになるなど、全く新しいビジネスとして「民泊ビジネス」が生まれようとしています。

新しいビジネスチャンスを活かして、いろいろな業界が活性化されることも期待できる反面、近隣住民の方々へ迷惑がかからないような仕組作りも必要になってきます。